【談話】
大阪市における「政治活動制限条例」および「労使交渉条例」の強行に抗議する
2012 年8 月2 日
全日本教職員組合
書記長 今谷 賢二
大阪市の橋下市長が市議会に提出していた「職員の政治的行為の制限に関する条例」(以下、「政治活動制限条例」)と「大阪市労使関係に関する条例」(以下、「労使交渉条例」)は、7 月27 日の大阪市議会最終日に、大阪維新の会および自民、公明の賛成多数で成立させられました。憲法に保障された思想・良心・表現の自由や団結権を蹂躙するものとして、全教は強く抗議の意思を表明するものです。
「政治活動制限条例」は、「職員の政治的行為の制限に関し必要な事項を定めることにより、…職員の政治的中立性を保障し、…市民から信頼される市政を実現することを目的とする」としています。そして、「特定の政党その他の政治的団体若しくは特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、若しくはこれに反対する目的」をもって行う行為を行ってはならないとして、「多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること」などをあげています。その上で、違反した職員には「原則として懲戒処分として免職の処分をする等の必要な措置を公正かつ厳格にとるものとする」としています。
また「労使交渉条例」では、「労働組合等と本市の当局との交渉の対象となる事項の範囲、交渉内容の公表等に関する事項等を定めることにより、適正かつ健全な労使関係の確保を図り、もって市政に対する市民の信頼を確保することを目的とする」としています。そして、労働組合との交渉事項を定めたうえで、政府でさえ「労働条件にかかわる事項は交渉の対象」となるとしている管理運営事項を「労働組合等と意見交換その他交渉に類する行為を行ってはならない」としています。
今日、
公務労働者に労働基本権を保障することは、国際的には常識となっています。それは、
日本政府が「我が国の公務員の労働基本権制約に関しては、従来よりILO から継続して指摘を受けてきた」と認めているところです。また、国家公務員の政治活動をめぐり正反対の結論が示された二つの東京高裁判決が、最高裁で争われていることに見られるように、
国家公務員法や人事院規則の違憲性を問う声も決して少なくありません。
橋下・維新の会とそれに賛同する大阪での動きはこうした大局的な流れに抗して、民主主義に反する逆流をつくりだそうとするものです。
大阪市の教職員や職員はもとより公務労働者には、自らの地位利用をしないかぎり、自由に政治的活動をする自由と権利があります。また、労働組合が要求を実現するために、署名宣伝行動や決起集会、デモやパレードなどを組織することや、それらの行動に労働者が参加することは、労働者や労働組合の固有の権利です。地域住民や労働者の要求の背景には、国や自治体当局が住民に不利益を強いる攻撃があります。大阪市では、橋下市長が「市政改革プラン」をすすめ、保育料の値上げや「敬老パス」の有料化をおこなおうとしています。このような攻撃を許さないために政策変更を求めることが、政治的な性格を持つことは当然です。
自治体労働者が住民サービスの切り捨て政策に反対し、個人あるいは労働組合に結集してとりくむことは、憲法上も何ら問題はないばかりか、住民の暮らしと利益を守るという公務労働者の本来の役割に適ったものです。
橋下市長は、個々の公務労働者が市民的立場から意見表明し、大阪市の公務関係労組が市の施策に反対することと、公務労働者が自らの職務を果さないことを意図的に混同させ、市民と公務労働者や労働組合との間に分断を持ち込もうとしています。これまでも、橋下市長は、選挙で勝てば「民意は我にあり」とばかりに、自らが打ち出す政策はすべて民意を代表するものであるかのように決めつけ、それに反対するものを容赦なく排除してきました。
橋下・維新の会は、大阪市の関係労働組合を交渉事項の極端な制限や職員団体の登録の取り消し、便宜供与の廃止等の脅しによって、公務労働者の政治的活動や労働組合運動に制限を加え、橋下・維新の会に屈服・協力する「もの言えぬ職員づくり」を狙っています。全教は、このような地方公務員制度の変質を図ろうとする条例の撤廃を要求するとともに、日本国憲法に則って、思想・信条の自由と基本的人権を守る立場から、断固としてたたかいぬくものです。
以上
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- 2012/08/14(火) 16:13:24|
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